『大神一郎の密やかな愉しみ』






「大神」

「・・・・・何だ?」

「非常にどうでもいい事なのかもしれないが、一応聞くぞ」

「だから何だ」

「お前ってさ・・・・・その、自分じゃ絶対やらないよな」

「ん?」

「だから・・・・・コレだよコレ」

「ああ」

「そう」

「コレね」

「そう・・・・・やらないよな?」

「確かにやらない」

「どうしてだ?」

「そりゃお前、自分でヤるよりも人にヤって貰った方がイイからに決まってるだろ」

「そうなのか?」

「そう」

「うーん・・・・・でも」

「なに?」

「でも、お前の場合、自分で処理した方が都合よくないか?」

「何で?」

「だって・・・・お前」

「何?」

「スグ溜まるし」

「ぐ;;」

「しかも毎回、量が多い」

「ぐぐっ;;;;」

「この1週間なんか、会うたびに殆ど毎回だぞ?」

「わ、わかった。わかったってば;;;;;」

「俺は仕事明けの体をさー・・・・こうしてさー・・・・・尽くしているのにさー」

「あー、もう、嫌になったんなら、お前には頼まん」

「あ、いや、べつに・・・・・嫌って訳じゃないんだけど」

「あ、そうなの?」

「むしろ、楽しくなってきた」

「ははは。そうか」

「そうだ。ははは」

「じゃ、何でそんな事を気にする?」

「だから、毎回量が多くてしかもスグに溜まって、あわよくば毎晩処理してしまいたい大神さんは・・・・・」

「それを繰り返すな;;;;」

「俺と会えないときは、どうしてるんだ?」

「んー?」

「どうしてるんだ、と聞いているんだ」

「いや・・・・・やっぱり他の──」

「他の人間にヤらせているのか!?」

「そ、そうだけど?」

「許さん!」

「はぁ?」

「ゆるさんゆるさんゆるさーん!!」

「あ、暴れるな!」

「浮気者!」

「何を言うか!?」

「言う!」

「黙れよ!・・・・・もう、夜も遅いんだから」

「じゃ、部屋の電気つけていいか?」

 「ダメだ。省エネ週間実施中」

 「今日くらい、明るいところでやらせてくれよ〜、大神ぃ〜」

 「ダメダメ。節約節約」

 「ケチ」

 「お前は子供か;;;;」

 「何を言う、俺は立派な大人だぞ」

 「自分で立派とか言うな」

 「お子様じゃ、お前の相手は出来ないだろうが?」

 「・・・・・確かに」

 「だろう?」

 「・・・・・って事で」

 「何?」

 「・・・・・もっとしてくれ」

 「・・・・・そうやって下から俺を見上げるな;;;;;」















 「・・・・しかし」

 「何だ?」

 「他の人間って──」

 「加山、今日は口数が多いなぁ;;;;」

 「あれを聞いて黙ってられるか・・・・・で、誰なんだ?」

 「うー・・・・・」

 「誰だ?誰?誰?」

 「んー・・・・・」

 「やっぱり、花組のみなさんか?」

 「バカを言うな!いくら常にいっしょにいるとはいえ、さすがに彼女達にさせたりしないぞ!」

 「そ、そうだったか?俺はてっきり・・・・・」

 「あたりまえだ!」

 「じゃぁ誰なんだ?」

 「・・・・・副司令」

 「はぁー!?お前、副司令に処理させてんのか!?」

 「だ、だって、あの人が『ツラそうね』って言うから・・・・・」

 「言うからって・・・・・お前・・・・・」

 「向こうが言ってきた事だし、お前とみたいにそんなにしょっちゅうじゃないし・・・・・」

 「信じられねぇ、お前・・・・・」

 「それに・・・・・」

 「・・・・・何だよ?」

 「その、今もこうしてお前に処理してもらってる状態で、大変申し上げにくいんだが」

 「直ちに言え。5,4,3,2,・・・・・・」

 「何の秒読みだ、何の!」

 「言え!」

 「その・・・・・お前より、・・・・・巧い」

 「ぐはぁっ!!!」

 「指も細いし、長いし、器用だし」

 「ううう;;;;」

 「・・・・・すまん」

 「う、うるさいわ!」

 「ゴメン」

 「やめろ!あやまられるとよけいに惨めだ〜!!」

 「言わなきゃよかったか?」

 「くすん;;;;」

 「泣くなよ、お前〜;;;;」

 「どうせオイラはテク無しさ〜」

 「そ、そんな事無いって。十分キモチイイし、スッキリするよ」

 「どうせ単純な前後運動しか出来ませんよーだ」

 「それで普通だってば!」

 「奥でグリグリとか、入り口だけとか、そんな芸当はアリませんよ。フンだ」

 「すねるなよ〜。最中に〜〜;;;;」

 「だって〜;;;;」















 「くすん;;;;」

 「いい加減に機嫌直せよ、加山〜」

 「くすんくすん;;;;」

 「加山は、男にしてはマシな方だよ〜」

 「・・・・・マジ?」

 「そうそう。マジマジ」

 「それを聞いて安心したよ。し〜あわせだなぁ、俺は♪」

 「全く、お前はホントに単純だな〜」

 「・・・・・でも」

 「何だよ〜、気にしすぎだよ、お前〜」

 「いや、そうじゃなくて」

 「何?」

 「お前、男の誰と比較して俺はマシだって言ってるんだ?」

 「・・・・・あ」

 「言え」

 「え〜?」

 「言え。言わなきゃ二度としてやらん。だから言え」

 「お前、この最中にそれ言うのって、殆ど脅迫に近くないか?」

 「言え〜、言えよ大神〜♪」

 「え〜?」

 「5.4.3.2.1・・・・・・」
 
 「だから、何の秒読みなんだそれは!?」
 
 「言えって〜!言えよ〜!」
 
 「わかった!わかったから耳に息を吹きかけるな!」

 「言え!」

 「・・・・・薔薇組だよ」

 「・・・・・」

 「・・・・・」

 「・・・・・」

 「ほーら引いた!ほーら引いた!」

 「・・・・・」

 「だから言いたくなかったんだよ、ちくしょー;;;;」

 「そりゃ引くって、お前」

 「どうせ俺は堪え性がありませんよ;;;;」

 「だってお前、いくらなんでも薔薇組はねーだろが」

 「だって他の選択肢って言ったら、お前・・・・・」

 「・・・・・あ」

 「な?」

 「確かに・・・・・」

 「・・・・・せーの」

 「「ヨネチュー」」














 「今度はこっち向けよ。大神」

 「ん・・・・・」

 「挿れるぞー・・・・」

 「うん・・・・・」

 「・・・・・」

 「・・・・・」

 「・・・・・大神」

 「何だよ?まだ何か気になるのかよ?」

 「薔薇組の人達は、その、具体的にどうなんだよ?」

 「どうって・・・・・正直、サイテーだよ」

 「サイテーって、お前;;;;」

 「菊乃丞は優しいだけだし、斧彦は乱暴だし」

 「ぜ、贅沢な上に、辛辣だなぁ」

 「清流院は・・・・・」

 「うんうん?」

 「テクは申し分ないが、しつこい」

 「それは逆にツライな;;;;」

 「もう何にも出てこないってのに、いつまでもやりたがる。疲れるよ」

 「ひえ〜」

 「俺には、やっぱりお前が一番いい」

 「くはぁ;;;;」

 「何?誉めてるんだけど?」

 「最中に、そういう事を突然言うな・・・・・照れるから」

 「勝手に、照れてろ」

 「うるさい、バカヤロー♪」

 「加山・・・・・」

 「何?」

 「・・・・・そこ、きもちいい」

 「なら、こうか?」

 「ん・・・・・」

 「どうだ?」

 「・・・・・もっと」















 「・・・・・ああスッキリした」

 「は疲れた;;;;」

 「なら、これからお前もしてやろうか?」

 「いいよ・・・・・もう遅いし、俺は帰るよ」

 「そんなに疲れたのか?」

 「だってお前」

 「何だよ」

 「お前の穴って、極端に狭いんだよ」

 「知るか」

 「休み無しの2連続だし。暗いし」

 「だから、省エネなんだってば」

 「せめて電気くらい付けさせろ!手元が狂うんだよ、手元が!」

 「わかったわかった・・・・なら、今度は昼間に外でやるか?」

 「えー?」

 「中庭あたりでどうだ?」

 「いやだぞ俺はー?恥ずかしいぞー?」

 「そうかー?」

 「そうだぞー」

 「しかしお前・・・・・」

 「なんだ?」

 「二回目はやけに早く終わったじゃないか」

 「終わったんだから、べつにいいだろ?贅沢言うな」

 「まぁ・・・・・いいけどさー」

 「ったく、毎日毎日コレだから・・・・・今度月組全員に襲わせてやろうか」

 「何か言ったか?」

 「別に!じゃーな!アディオス!!」

 「あ、待て!」

 「とーうっ!!」

 「加山、忘れ物ー!」

 「うるさーい!かえるー!」

 「アレをやって貰わないと、終わらないだろうがー!」










 こうして夜は終わった。

 後には、加山の残していった耳かき棒を手にした大神が一人ぽつんと残された。

 「まぁ、綿毛くらいは自分で当てるか」

 そう言って大神は耳かき棒の綿毛を耳に当て、こそこそと動かし始めた。丹念に。

 耳をなでる綿毛の感触は、まさに至福と呼ぶにふさわしいものだった。

 しかし、利き腕側の耳はいいが、逆側になると腕を変な方向にまわさないといけなくなり、とたんに苦しい顔になる。

 はっ、と一つ大きなため息を付いて、大神は言った。

 「やっぱり人にしてもらったほうがイイなぁ・・・・・」











 大神一郎の密やかな愉しみ:完