| まだ口の中にあるせんべいを飲み込む事も忘れて固まったままの大神に、加山はおそるおそる、こう囁いた。 「これ、ラブレター・・・・・だよな」 「・・・・・多分」 「お前宛・・・・・だったよな」 「いや・・・・・」 殆ど唇だけで喋っている大神。顔の筋肉が完全に硬直してしまっていた。どうやら、この事実をどう受け入れて良いものか、判断出来ずにいるようだ。 「でもホラ、ここにお前の名前書いてあるだろ?」 「でも・・・・・」 「帝劇にモギリはお前しかいないだろうが」 「うん・・・・・・」 「っていうか、『風邪など召されなさらぬよう』って用法は日本語として正しいのか?」 「・・・・・うむー」 加山が促しても、大神は殆ど返事らしい返事を返してこない。今や、大神の自我は完全に喪失していた。だが、それもよくよく考えてみれば無理もない事で、石から生まれた石太郎、その髪型以上にきっちりと整った性格をしている大神には、今まで本人や他が「がーるふれんど」(何故ひらがなで表記されるかといえば、大神にとってこの外来語は未だに非日常的響きを持っているからである。あらゆる意味で)と認めるような異性は存在していないのだ。たとえ加山が大神と共通の記憶を士官学校時代まで振り返ったとしても、いや、もしかしたらそれ以前まで振り返ったとしてもその可能性は薄いだろう。なにしろこの大神は、仕事場である帝劇に配属されるまでは『男女七歳にして席を同じにせず』という古の言葉に亀甲縛りで逆さ吊りにされていたような男なのだ。これぞ日本男児の生活姿勢と言えなくもないが、度を過ぎてしまったのでは体に良くない。 加山は便箋を手にしたまま未だ硬直が解けない大神を眺めながら、改めてこの男の女性観を分析しはじめた。その為の資料なら、加山の脳内演算機に山ほどインプットされている・・・・・主にネガティブな物ばかりが目立つのだが。 まず大神は、女を口説くとか女の機嫌を取るという行動に長けていない。長けていないと言うよりは、その能力がやや足りないと言っていい。いや、この際だから『完全に欠落している』と言い切ってしまおう。 いつぞや、さくらと大神のこんな会話に出くわした事がある。題して、「真宮寺さくらメッタ切り事件」だ。 さくら:「ねぇねぇ、大神さん♪」 大神:「なんだい?さくらくん?」 さくら:「あの、大神さん的には、でいいんですけど、ちょっと意見を伺えないかなーと思って♪」 大神:「そんな事なら、お安い御用だよ?訓練の事かい?それとも、公演の事かい?」 さくら:「そ;;;;;そんなんじゃないんです;;;;;」 大神:「あ、そうなの?」 さくら:「そう!そうなんです(怒)!」 ・・・・・途中ではあるが、ここで解説を入れよう。 まず、この男にはさくらの台詞の末尾にある「♪」マークが全く見えていない。「らぶらぶビーム」全力放出中のさくらが、わざわざブラウザによってはまともに表示されないかもしれない危険を強いてHGP創英角ポップ体で話しかけているというのに、それを、何故、ああ何故にしてMSP明朝体で返答するのか?標準のMSゴシック体だって十分だろうに。 なにより、大神は隊員が自分に声をかけてくる時は仕事がらみと決め付けている点にも問題がある。良く解釈するならば仕事熱心と言えなくもないが、それにしてももう少しゆとりというか、遊び心があってもいいはずだ。大神に「仕事バカ」という言葉を用いる場合、本来の『バカみたいに仕事をする(出来る)男』という意味ではなく、『仕事しか能のないバカ』という意味で用いるべきだろう。 さくら:「あの、大神さんはですね・・・・・(もじもじ)」 大神:「?」 さくら:「その・・・・・(もじもじもじ)」 大神:「どうしたんだい?(意味もなく白い歯を見せつつ微笑む大神)」 さくら:「えっと・・・・・(もじもじもじもじ)」 大神:「・・・・・・さくらくん」 さくら:「は、はいぃっ!?」 大神:「もしかして、トイレ?」 さくら:「ちっがーうっ!!!(激怒)」 ・・・・・ここまで来ると、もはや弁護も必要ない。この男には『場の空気』というのものが全く読めていないのだ。今時の若い男が「もじもじ仕草=トイレ」とは、どんな思考回路をしているのやら。一度ぱっくり頭を割って中を覗いてみたいものである。 さて、この事件の終演までにはまだまだ時間があるのだが、紙面の都合もあり、これ以上のコメントも弁護も必要ない(というか、しようが無い)ので、ここから先は一気に読んで頂こう。もちろん、各々の台詞は一切誇張されていない。 さくら:「あのですね・・・・・・お尋ねしたいのは、大神さんの女性観、なんですけど・・・・・」 大神:「んー・・・・・それはもしかして『好みのタイプはどんな女性か』っていう質問かい?」 さくら:「そう!ぶっちゃけて言うとそうなんです!」 大神:「いいよ。それで?」 さくら:「あ、その・・・・・・大神さんは、女性はハートよりもルックスを重視されるタイプですか?」 大神:「(あっさりと)いや、ハートでしょう」 さくら:「え?そうなんですか?(驚)」 大神:「そうだよ。女性の顔がいくら綺麗でもハートが無ければ付き合えないよ」 さくら:「そうですよね!やっぱり女性はルックスよりもハートですよね♪(ぴょんぴょん♪)」 大神:「うん、俺はそう思うよ」 さくら:「そうですよねっ♪そうですよねっ♪(舞うように、右に左にガッツポーズ)」 大神:「ルックスなんて、そんなもんは二の次三の次四の次だよ。ははは」 さくら:「・・・・・・え?そうなんですか?(舞終了)」 大神:「ま、女の子の顔なんて、特別なんとも思わないというのが本音かな」 さくら:「・・・・・そ、それはちょっと;;;;;(やや引き)」 大神:「とりあえずデッサンが狂ってなければ余裕で合格だね」 さくら:「・・・・・・そ、それもちょっと;;;;;;(ドン引き) 大神:「やっぱり女の子はハートでしょう。多少欠点が多かろうがファッションセンスが無かろうが・・・・・」 さくら:「・・・・・・はぁ;;;;;(かなり鬱)」 大神:「目立とうが目立つまいがおてんばだろうがぺチャパイだろうが全く問題なし!逆の意味で問題外!」 さくら:「・・・・・・へぇ〜;;;;;(真鬱)」 大神:「ところで、どうしてそんな事を聞くんだい?」 さくら:「・・・・・・いえ、もういいです;;;;;(激鬱)」 大神:「(突然気づいたように)・・・・・・もしかして、好きな人でも出来たのかい!?」 さくら:「・・・・・・うぅ;;;;;;(爆鬱) 大神:「大丈夫!思い切ってトライすれば、その人は必ずさくらくんの事を見てくれるよ!」 さくら:「・・・・・・うううぅ;;;;;(核爆鬱)」 大神:「だってさくらくんは、ハートだけなら誰にも負けてないじゃないか!」 さくら:「お・・・・・大神さんのバカー!!!!(超・核爆鬱X100)」 ・・・・・・以上が「真宮寺さくらメッタ切り事件」の全容である。さくらはこの会話の後、脱兎の如き速さで自室に駆け戻り、あまりのショックに3日間も部屋に閉じ篭ったという。ちなみに大神もまた、同じく三日間部屋から出ていない。まぁ、大神の場合は最後の台詞の0.003秒後に襲い掛かってきた霊剣荒鷹の乱舞から逃れられなかったから、というのが理由なのだが。 脳内劇場が一段落したところで加山が再び視線を大神に戻すと、ちょうど大神は便箋を丁寧に折りたたんでいるところだった。どうやら硬直状態からは解放されたらしい。加山は茶の残りをすすりながら、大神に話しかけた。 「で、どうするんだ?」 「んー?」何度か瞬きを繰り返した後、大神はこう言った。「もちろん、会うけど?」 「ふーん・・・・・・・ ・・・・・・・・ってぇえええええええええ〜〜〜〜〜!!!???」 |
ぇえええ〜〜〜〜〜!?(by加山)
手紙の相手に会っちゃうんですか大神さん!?
それは果たして許される行為なのか?
待て!次週!
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