まったくほんとーにしつれーしちゃうんだわ。だれもわたしのことを「れでぃー」だっておもってくれないのね。いーもん。もういーんだもん。アイリスがんばるもん。こんなヘンテコくーかんにいつまでもよーはないのよ。わたしがよーがあるのはおにーちゃんだけなのよ。なにしろあしたはなくこもだまる『ばれんたいんでー』なのよ。「こいするおとめ」は「あいするだんせー」にチョコレートをプレゼントして、かれのハートを『ぴんぴろりろりろりろりん♪』しちゃうのよ。
 だっておにーちゃんはわたしのこいびとなんだもんねー!ねー!ねー!
 ところでじぶんでいっててなんだけど、「こいするおとめ」ってすてきなひびき♪きゃっ♪


 ・・・・・ってな具合の独り言を頭の中で繰り返しながら、衣装部屋にある衣装ハンガーの間から顔を出したのは、『歩く地雷原』の愛称でおなじみ・・・・・・じゃなくて、『帝劇の妖精』の愛称でおなじみの、イリス・シャトーブリアン嬢である。只今、トレードマークである大きなリボンを右に左に揺らしつつ、この場所に自分以外の人間の気配が無い事を確認している真っ最中だ。

 
 わたしはもう、かんぜんにほんとーに「おとなのれでぃー」なのよ。いまのところだれもほんきにしちゃくれないけれど、わたしのからだのことはわたしがいちばんよーくしってるのよ。わたしがおとなだとおもってるからおとななのよ。おとなってのはそーいうものなのよ。よねだのおじちゃんふーにいえば、こんなかんじよ。
 
 『ふつかよいでめいってたんじゃ、よねだいっきのながすたる!
  ぐぎゃははは!さけじゃさけじゃ!さけもってこーい!』

 
 ・・・・・ってなかんじなわけよ。わたしだってまけてないのよ。だっておとななんだから。おなじテンションだせるのよ。なんてったって、わたしはてーげきのぶたいじょゆーなんですからねエッヘン!
 いくよ?せーの・・・・・
 
 『むしばなんかでめいってたんじゃ、イリス・シャトーブリアンのながすたる!
  きゃはははは!ホットケーキとメープルシロップもってきてー!』

 
 きゃ〜♪かんぺきよ!か・ん・ぺ・き!
 ぜつみょーにいーかんじだわ♪これだけのテンションでくだをまけるなんて、わたしってやっぱりおとなだわー♪
 でも『すたる』ってなにかしらね?なにかしってるジャンポール?しらない?あっそう。ならいーわ。どーせ「おとなのれでぃー」にはかんけーのないことなのよ。どーせ『すたる』なんてことばをつかうのは、よねだのおじちゃんみたいな「ろーじん」だけなんだわ。だから「おとなのれでぃー」のわたしにはぜんぜんまったくかんけーのないことなのよ。でも『くだ』はしってるわ。『くだ』は『くだ』なのよ。つまりストローなのよ。ホットケーキをホットケーキにはさんでたべて、メープルシロップをストローでのむんだわ。うーん♪それってズバリりそーきょー♪いっつ・あ・へぶんずわーるどだわ。ジャンポール、あなたもそうででしょ?

  
 大きな瞳をきょろきょろと動かし、床にはいつくばっては耳を澄ませ、抜き足差し足忍び足。
 アイリスは今、完全に九ノ一になりきっていた。それは数日前に見た忍者映画の影響なのだが、彼女の幼くして強烈な自我がそれを認めるはずもなく、彼女自身にしてみれば、背中に忍者刀を背負っていないのが不自然で格好悪く思えてしまうほど、彼女は忍者になりきっていた。もはや誰がなんと言おうと、たとえ頭の中に広がる活字が全て平仮名であったとしても、今の彼女は九ノ一なのであった。

 
 
とにかくともかくとりあえず、これからだれかにあったらどーにかしないといけないのよ。でもだいじょーぶだからねジャンポール?こんなこともあろーかと、きょうのわたしはひっさつわざをみにつけているのよ。ひっさつわざをもつおんなはひとあじちがうのよ。へへへん、だ♪
 じゃじゃーん!それは、「いやポン」よ!
 ・・・・・あれ?
 ジャンポールは「いやポン」をしらないの?
 そっかー、うんうん。しかたないわねぇ。じゃーあたしがおしえてあげるわ。なんてったって、おとなのちしきだもんね♪うふっ♪
 あのね、よく「そーてんねんしょく」の「ぼーけんくーそーかつげきえーが」にでてくる、「ちょーのーりょくしょーじょ」がいるでしょ?・・・・・もとい、「ちょーのーりょく『び』しょーじょ」がいるでしょ?
 ・・・・・なによ、なにかひとこといいたそうなかおしてるじゃないの?ジャンポール?びしょーじょがじぶんのことをびしょーじょってよんでなにがわるいってーのよ。びしょーじょはびしょーじょでしょそうでしょ?そりゃー、『おーかつひろとも』がかいたマンガの『むーど』にでてきたちょーのーりょくしょーじょはぶっさいくよ。でも、しんのちょーのーりょくしょーじょっていうのはね・・・・・・
 ・・・・・だからなんなのよ、そのめは。
 ・・・・・ねーえ?ジャンポール?
 
 
 
 
 そのけがわひっぱがして

 じんこーしばでも

 いしょくしてあげよーか?

 
 
 
 
 ぱちぱちぱちぱち!ハイよくいえましたー♪&ハイよくできましたー♪
 そーよねー♪おいたはいやよねー♪じゃんぽーるもわがみかわいさにはよわいってことねー♪だいじょーぶだからねー♪じんこーしばなんかいしょくしたりしないからねー♪でもつぎはないわよー♪こうかいするひまもあたえずやるからねー♪しっかりとおぼえておくのよジャ・ン・ポー・ル?
 え?もうおぼえた?あーそー♪ホントにいいこねー♪
 じゃ、つづけるからね?
 でね?そのびしょーじょがね、なにかのきっかけてすっごくこーふんして、かんたんにいうとブチギレおこして、たとえばじぶんをおいかけてきたわるいおとこのひととかにむかって「いやっ!」てひとこというと、そのいきおいでわるいおとこのひとが「ボーン!!」ってはじけとんじゃうっていう、そりゃーもうファンタスティックかつスペクタクルなわざなのよ。うんとねぇ、たしか『ほのおのてんこーせーチャーリー』っていう、むかーしむかしのがいこくえーがで、たしか『バリュー・ドリモア』ていうじょゆーさんがこどものときにつくったえーがなのよ。そんなにすごいえーがじゃないわ。まー、しるひとぞしるってところかしらね。でね、ちょっとかわいそーなこともあってね。ドリモアのかてーかんきょーがよくなかったのよね。7さいでえーがをとったあと、9さいでアルちゅーになって、10さいでまやくにてをだして、13さいでけーむしょのおせわになっちゃったんだって。それでもなんとかこーせーして、いまじゃすっかりトップスターのなかまいりしてるのよねー。すさまじーけーれきのもちぬしっているのよねー。こないだじょーりくした『えんじぇるずちゃーりー』でさんにんぐみのひとりをやってたわ。すごいわねー。わたしもいまからアルちゅーになってけーむしょにはいったらえーがにでられるのかしら?どーなのかしらねジャンポール?
 

 じゃ、やってみるわね。
 せーの・・・・・

 
 
 
 
 
 いやっ!
 
 
 
 
 
 ・・・・・あれ?
 ・・・・・おっかしーなぁ?
 ぜーんぜんだめだわ。こんなんじゃぴくっともしないわ。そりゃまぁ、なんかまわりにあるドレスはかべぎわまでぶっとんでいったけど、ドレスがぶっとんだからってべつにどーしよーもないのよ。いしょータンスがばらばらになってるけど、そんなもんバラバラなったからってどーしよーもないのよ。すけーるがちーさすぎるわ。たぶん、こんぽんてきなぱわーがぜんっぜんちがうのね。フォントのしゅーせーくらいじゃおいつかないってコトなのね。ほかにもなにかちがうのかしら?どーなのかしらねジャンポール?
 じゃ、すこしじぶんなりのくふーというものをくわえてみましょうか。
 うーん、われながらかしこい♪わたしったら、どりょくをおしまないタイプだわ。よきひとづまによーきゅーされるべきよーそをじゅーぶんにみたしているわ。もーまんたいだわ。だんなさまはおーよろこびまちがいなしね。こんねんどのおよめさんにしたいぶたいじょゆーなんばーわんはわたしのものよイェーイ!
 
 じゃ、ハリキッていってみましょー。
 いきをおもいっきりすってー・・・・・
 すってー・・・・・
 すって・・・・・
 ・・・・・
 ・・・・・
 
 
 
 
ぶばらぼぁ!!!
 
 
 
 あぶないわあぶないわ。いきをすいすぎてうしろにそっくりかえってひっくりかえってむせかえるところだったわ。いきをすったらはかないといけないのよねー。そーよねー。そんなのじょーしき、うちゅーのせつりだわ。ジャンポールもちゃんとおしえてくれなきゃダメじゃないのー。あ、でもジャンポールはおにんぎょーさんだからわかんないのか。しょーがないなぁ。こんどはなのあなでもあけてあげよーか?ブスっとね。
 でもいきをすうのってけっこーきけんなのね。しらなかったわ。もしかしてトラップかしら?
 
 じゃ、きをとりなおして・・・・・

 
 
 
 
 
 


 
 
 
 
 
 
 ・・・・・・うーん。
 いーかんじなんだけど、いまいちイケてないわ。そりゃさっきよりもマシかもしれないけど、やっぱりだめね。かべにプラズマみたいなひびがはいったけど、それでもダメよ。『おーかつひろとも』のかつげきまんがではひとひとりがブッとんでたのよ。えーがではわるいはかせがどっかんどんかんもえてたわ。かたかなってのもダメね。すくないちょくせんでこーせーされているためにみためのインパクトがいまいちなきがするわ。じづらがよわいわ。ここはひとつ、あえてひらがなでいくべきね。
 それと、やっぱり『もえ』がたりないわ。いわゆる『ばーにんぐ』ってやつよ。そーよもえるのよアイリス!ばーにんぐよ!ばーにんぐはんまーよ!オレンジだましいよ!せーしゅんのにぎりこぶしをつくるのよ!(ぎゅ)
 
 さぁこんどこそ、きあいをいれて。
 えっと、しんこきゅーよ。しんこきゅー。いきをすったらはくのよ。こんどはわすれないわ。エヘヘヘヘー♪
 すぅー、はぁー。
 うん。いーかんじだわ。もっとおーきくやってみようっと。
 すぅー、はぁー。
 すぅー・・・・・はぁー・・・・・・
 すー・・・・・ぅ、はー・・・・・ぁ・・・・・
 すー・・・・・・・・・・
 すー・・・・・・・・・・
 ・・・・・
 ・・・・・
 
 
 じゃすと・あ・もにゅめんと!!
 
 
 あぶないあぶないあぶないわ。しんこきゅーしたら、おもわずねむりそうになちゃったわ。いきをすーのもきけんなら、いきをはくのもきけんなのね。やっぱりトラップ?。

 
 
 それでは、あらためましてもういちど。
 いくよー・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 アイリスの小さな体から発せられたエネルギーは彼女を中心にして大きく膨れ上がり、やがて一つの光の玉となった。光は彼女自身を飲み込み、衣裳部屋に散らばるドレスを飲み込んだ。衣装ダンスを、シャンデリア風の照明を、プラズマのようなひびの入れられた壁を飲み込んだ。彼女が立つ床も、彼女が見上げる天井も飲み込んだ。隣の楽屋で誰かが入ってくるのを待ち構えながら、壁の向こうから聞こえている物音に耳をそばだてていた織姫も飲み込んだ。「わっタクシの出番ってコレだけでスかー?」という、某元祖アジアン系アイドルを髣髴とさせるイントネーションも飲み込んだ。彼女が持ち込んでいた武器も、その正体を明らかにすることさえ許さずに飲み込んだ。そしておそらく、彼女自身の未来への希望も、その他の全てと一緒くたにされて飲み込まれた。
 光は飲み込んだ全ての物を無に帰した。その様はまるで熱したナイフがバターをくり抜くかのようだった。
 光は徐々に収縮を見せ、やがて収まると、そこにはただ、ジャンポールを抱いて宙に浮かぶアイリスの姿だけがあった。彼女はくり抜かれた空間をゆっくりと下降し、空間の最下部、地下の大浴場のタイルの上にちょこんと着地すると、くるくるっと体を回転させながら周囲をを見回した。
 大丈夫。誰もいない。
 彼女はその結果に満足した。
 「じゃ、行こっか?ジャンポール?」
 少女はうっすらと誇りを被って汚れてしまった衣服をパンパンと叩いた後、そう呟いた。
 事も無げに。
 
 
 
 【残り12人】
 ソレッタ・織姫 −再起不能−

 
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出たぞ!初の戦没者!

いや、君の言いたい事は良くわかる!だから言うな!!

ちなみにドリモアの話は名前以外の全てが実話!!

待て、次週!